厄年日誌

私のライフワークブログです。途中まで学生時代の記事です。

メタンと塩素のラジカル反応

前回まで光化学工業の可能性を探ってきました。勿論すぐに実行できる訳ではないので、出来る事からという事で現在私が担当している化学工場で熱分解反応があるので、それを光化学反応に変えられないかと考えております。その為にはまず現状把握として、熱分解反応を理解したいと思います。ここで熱分解反応は気相ラジカル反応ですので、ラジカル反応についてメモを取ります(ここでの例はメタンと塩素のラジカル反応)。引用元は下記です。

 メタンと塩素の混合気体に光を当てると、置換反応が起こり、CH3Cl、CH2Cl2、CHCl3、CCl4などのメタンの塩素置換体と塩化水素を生成する。塩素分子の結合エネルギーは比較的小さいので、光によりCl-Cl結合が切れ、塩素原子Cl・を生じる(・は電子)。

   

Cl-Cl --(光)→ Cl・ + Cl・   ①

 不対電子をもつ塩素原子は、エネルギーが高く不安定で、非常に大きな反応性を持つ。このような化学種をラジカル(遊離基)といい、ラジカルが関係する反応をラジカル反応という。この塩素ラジカルは、②式のようにCH4分子に衝突すると、H・を引き抜いて容易に安定なHCl分子になるが、そのときメチルラジカル・CH3を生じる。

Cl・ + CH4 --(H・の引抜)→  HCl + ・CH3   ②

 メチルラジカルも非常に反応性に富み、③式のように、Cl2分子と衝突すると、Cl・を引き抜いてクロロメタンCH3Clになる一方、塩素ラジカルCl・が再生産される。このように、最初にCl・が作られると、②式と③式が何回も繰り返される連鎖反応となる。

・CH3 + Cl-Cl --(Cl・の引抜)→ CH3Cl + Cl・   ③

 上記の連鎖反応では、①式を連鎖開始反応、②、③式を連鎖成長反応というが、この連鎖が永久に続くわけではない。ときどき次のようなラジカル同士の反応が起こって、連鎖がストップする事がある。④、⑤、⑥のような反応を連鎖停止反応という。

Cl・ + Cl・ →  Cl2   ④

・CH3 + ・CH3 → CH3CH3   ⑤

・CH3 + ・Cl → CH3Cl   ⑥

 このラジカル置換反応では、1個の塩素ラジカルの生成によって、平均すると②、③式の反応を約5,000回も繰り返して終わる、という事が確かめられている。

引用元 : 理系大学受験 化学Ⅰ・Ⅱの新研究 卜部吉庸著 2005年第6刷 p476