厄年日誌

私のライフワークブログです。途中まで学生時代の記事です。

ポリエステルの分解と分解部

担当の化学工場の反応工程以外の工程で、意図せず精製に使用されるポリエステルの生地が工程液により引き裂かれる事が起きた。

生地の状態を見ると機械的ではなく化学的な要因で裂けている事が分かった。工程液では水酸化ナトリウム水溶液や硫酸を含んだカルボン酸があり、このどちらかが原因となる。この仮説を確認する為実際に両方の液(水酸化ナトリウム水溶液&希硫酸)を用意し、液中にポリエステル生地を浸漬させかつ一定温度で加熱し、生地状態を確認した(実際のテスト写真等の具体的な情報は都合上開示出来ない)。テストの結果、ポリエステル生地は水酸化ナトリウム水溶液内で一定温度をかけると完全に溶解した(跡形なし)。硫酸では、ポリエステル生地は粉々になった(跡形あり)。これらに理屈を与える為、裏付けを与える情報を探した。エステルは一般的に水酸化ナトリウム水溶液で加水分解する事は分かっているが、これはポリエステルでも起こる事であろうか。

下記のリンク先にプラスチックの分解のメカニズムが説明されていたので紹介する。

(1)加水分解
水分によって分解することを加水分解という(図2)。分子鎖にエステル結合または炭酸エステル結合(注2)を有するプラスチック(ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート)は高温水や高温蒸気中では加水分解による劣化が起きる。アルカリ性薬液の存在下では加水分解劣化はさらに促進される。温度が高いほど短時間で加水分解する傾向がある。

図2 加水分解

図2 加水分解

(2)酸化分解
プラスチックは強酸性薬液(強い酸性の薬液のこと)と接すると酸化作用により酸化分解する(図3)。薬液としては濃塩酸、濃硫酸、濃硝酸などがある。温度が高いほど短時間で酸化分解する傾向がある。

図3 酸化分解

https://plabase.com/news/6618

ポリエステル(プラスチックの一種)は水酸化ナトリウム水溶液で加水分解し、硫酸で酸化分解している事が分かった(自分の仮説通り)。加水分解した後、ポリエステルはカルボン酸ナトリウムとなり、水に完全溶解したという事になる。酸化分解はよく理解出来ないが、現象から考察するとポリエステルのエステル結合が強酸により酸化されやすい分子鎖という事になる(=(芳香族含む)炭化水素では酸化分解が起きない)。これは、ポリエステル生地のテストと同じ内容でポリプロピレン生地でも浸漬テストを実施した所(※)酸化分解が全く起きなかった事で、証明される。

(※工程液にポリエステル生地が耐えられない事が想定された為、念の為対策生地案として実施)