CO2還元(光合成について)
CO2還元に関して、前回の植物の反応から先の反応を書籍*1)を元に考えてみます。
反応にいく前に、植物の葉緑体を下図にて示します。光合成は下図のチラコイドで起こる反応と、ストロマで起こる反応からなります*2)。
1. チラコイドで起こる反応
葉緑体のクロロフィルは光エネルギーを吸収して活性化されます。この吸収エネルギーよりH2Oが[H]*3)と酸素(O2) に分解され、酸素は細胞外に排出されます。水素Hは水素イオンH+と電子e-に分かれ、電子だけが酵素間で受け渡されていきます。この過程でATP(アデノシン三リン酸)が合成されます。エネルギーを失った電子e-は、水素イオンH+と結びついて水素[H]となり、あとの反応で利用されます。
12H2O → 6O2 + 24[H] ④
2. ストロマで起こる反応(カルビン・ベンソン回路)
外部から取り込まれた二酸化炭素CO2は、葉緑体中にあるリブロース(五炭糖)に取り込まれますが、ただちに分解してグリセリン酸(C3)になります。グリセリン酸は、チラコイドで作られたATPのエネルギーで活性化された後、水素[H]で還元され、グリセルアルデヒド(三炭糖)となります。グリセルアルデヒドはその一部はグルコースとなる一方、残りはリブロースに戻ります。
6CO2 + 24[H] → C6H12O6 + 6H2O ⑤
④、⑤をまとめて
6CO2 + 6H2O → C6H12O6 + 6O2 ⑥
前回の②は今回でいうチラコイドで起こる反応であり(つまり④)、それとストロマで起こる反応とまとめたのが⑥なので、CO2を還元する植物光合成の総括反応式は⑥となります。下図がとても分かりやすいので、御参照下さい。
*1)理系大学受験 化学Ⅰ・Ⅱの新研究 卜部吉庸著 2005年第6刷 p680
*2)葉緑体内部にある、緑色の扁平な袋状のものをチラコイドといい、ここにはクロロフィルをはじめ、各種の光合成色素が存在する。それ以外は、無色の基質部分でストロマと呼ばれる。
*3)[H]は、補酵素NADP(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)と結合した状態の水素を示す。